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おお振りより。
栄口×三橋。
栄口×三橋。
騒がしい喧騒を耳にしながら、深々と溜息をつく。
地味な公園に櫓を立て、夏にお馴染みの音楽を流しながらその周りを囲んで踊る。
きらきらと光る明かりが目に痛くて仕方がなかった。
はっきりいってくだらないうえに、時間の無駄だ。
こんな物で、そこらを走り回るような連中と同じようにはしゃぐ気にはとてもならない。
では何故こんなところに来ているのかといえば、それはもう一種の義務である。
子どもである以上祭りなんて心躍らせるイベントの筆頭であるし、彼女たちの心遣いも無碍にはできない。つまり自分は、そういう子どもなのである。
「それにしても、これからどうするかな・・・」
人が集まっている公園の中心部から離れて、人気のない暗がりに移動する。
背中を壁に預けながら、小さく独りごちた。
このまま帰ってしまいたいのはやまやまだが、まだここに来てから10分も経っていない。
さすがにそれでは、ここに来たこと自体が無駄になってしまう。
「仕方ない・・・」
本当はこんなくだらないことに時間を割きたくはないのだが、
少しでも楽しんだという物的証拠を残しておいたほうが後々役に立つだろう。
我ながら損な性分だと苦笑しつつ、さて何から行くかと辺りを見回す。
そこで目に入ったのは美味しそうなにおいを漂わせる屋台でも、煌びやかに輝く櫓でもなく、ひとりの少年だった。
「っ・・・!」
思わず息を飲んで、その少年から目が離せなくなる。
その視線に気がついたのか、彼がこちらを向いてばちりと視線が絡み合った。
早く、早く目を逸らさなければと思うのに、体がいうことを聞いてくれない。
彼はその視線に一瞬びくりとなりながらも、すぐにそれから逃れようともせず、あろうことかとてとてと駆け寄ってきた。
「あ、あのっ・・・」
「え、あ、そのえと・・・!」
傍まで近寄ってきた彼は自分よりも幾分小柄で、自然と見下ろす形になってしまう。
あんなに不躾に視線を投げていたことを謝らなければと思うのだが、やはり体が言うことを聞いてくれなかった。
「これっ、を・・・!」
「ごめ・・・・・んって、え?」
当然怒られるだろうとやっとの思いで謝罪を口にしたら、彼はこちらの予想を遥かに上回った行動をとってきた。それはつまり、しっかりと握りしめていたお面をこちらに押しつけてきたということで、
「あの・・・?」
疑問符に満ちた頭で彼を見ると、真っ赤な顔でぐいぐいとそのお面を握らせようとしていた。
その勢いに、思わずそれを受取ってしまう。
すると彼が、目に見えてほっとした表情を浮かべた。
「オレ、お祭り好き、で、だから、あの・・・・寂しそうで、その、」
「こんな日に独りでいたから、可哀想だって思った?」
自分で思った以上の冷えた声が出て、彼がひっと竦みあがる。
それでもふるふると一生懸命に首を振って、涙を溜めた目で見上げてきた。
「ちがっ、違いま、す!そうじゃなくて、その・・・もっと、深いとこ、が・・・」
「・・・深い、ところ」
「あの・・・・・・ごめん、なさい・・・」
急に縮こまってしまった彼の頭に、ぽんと手を乗せる。
言ってやりたいことはたくさんあった。
深いところって何?とか、君に何が分かるの?とか。
いつもの笑顔で、覆い隠してしまうことだってできたはずだ。
「・・・・・・ありがとう」
びくりと怯えるように見上げてきた彼に小さく告げる。
すると彼は驚いたように目を瞬かせ、ふわりと本当に嬉しそうに微笑んだ。
「あのさ、君の・・・」
名前をと続けようとしたところで、彼がはっとしたように後ろを向く。
そちらに意識を向けると、何かの叫び声のようなものが聞こえてきた。
『・・・ん、レンっ!どこだ、レン!!』
「オレ、いかなくちゃ・・・・・さよ、なら」
「っ、ちょっ・・・!」
待ってという暇もなかった。
するりと抜け出して、とたとたと走り去っていく。
相手がよほど大事なのかもしれない、そう思ってちくりと胸が痛む。
「レン・・・ね」
握りしめたお面を見つめながら呟いた言葉は、夏の喧騒にかき消されていった。
地味な公園に櫓を立て、夏にお馴染みの音楽を流しながらその周りを囲んで踊る。
きらきらと光る明かりが目に痛くて仕方がなかった。
はっきりいってくだらないうえに、時間の無駄だ。
こんな物で、そこらを走り回るような連中と同じようにはしゃぐ気にはとてもならない。
では何故こんなところに来ているのかといえば、それはもう一種の義務である。
子どもである以上祭りなんて心躍らせるイベントの筆頭であるし、彼女たちの心遣いも無碍にはできない。つまり自分は、そういう子どもなのである。
「それにしても、これからどうするかな・・・」
人が集まっている公園の中心部から離れて、人気のない暗がりに移動する。
背中を壁に預けながら、小さく独りごちた。
このまま帰ってしまいたいのはやまやまだが、まだここに来てから10分も経っていない。
さすがにそれでは、ここに来たこと自体が無駄になってしまう。
「仕方ない・・・」
本当はこんなくだらないことに時間を割きたくはないのだが、
少しでも楽しんだという物的証拠を残しておいたほうが後々役に立つだろう。
我ながら損な性分だと苦笑しつつ、さて何から行くかと辺りを見回す。
そこで目に入ったのは美味しそうなにおいを漂わせる屋台でも、煌びやかに輝く櫓でもなく、ひとりの少年だった。
「っ・・・!」
思わず息を飲んで、その少年から目が離せなくなる。
その視線に気がついたのか、彼がこちらを向いてばちりと視線が絡み合った。
早く、早く目を逸らさなければと思うのに、体がいうことを聞いてくれない。
彼はその視線に一瞬びくりとなりながらも、すぐにそれから逃れようともせず、あろうことかとてとてと駆け寄ってきた。
「あ、あのっ・・・」
「え、あ、そのえと・・・!」
傍まで近寄ってきた彼は自分よりも幾分小柄で、自然と見下ろす形になってしまう。
あんなに不躾に視線を投げていたことを謝らなければと思うのだが、やはり体が言うことを聞いてくれなかった。
「これっ、を・・・!」
「ごめ・・・・・んって、え?」
当然怒られるだろうとやっとの思いで謝罪を口にしたら、彼はこちらの予想を遥かに上回った行動をとってきた。それはつまり、しっかりと握りしめていたお面をこちらに押しつけてきたということで、
「あの・・・?」
疑問符に満ちた頭で彼を見ると、真っ赤な顔でぐいぐいとそのお面を握らせようとしていた。
その勢いに、思わずそれを受取ってしまう。
すると彼が、目に見えてほっとした表情を浮かべた。
「オレ、お祭り好き、で、だから、あの・・・・寂しそうで、その、」
「こんな日に独りでいたから、可哀想だって思った?」
自分で思った以上の冷えた声が出て、彼がひっと竦みあがる。
それでもふるふると一生懸命に首を振って、涙を溜めた目で見上げてきた。
「ちがっ、違いま、す!そうじゃなくて、その・・・もっと、深いとこ、が・・・」
「・・・深い、ところ」
「あの・・・・・・ごめん、なさい・・・」
急に縮こまってしまった彼の頭に、ぽんと手を乗せる。
言ってやりたいことはたくさんあった。
深いところって何?とか、君に何が分かるの?とか。
いつもの笑顔で、覆い隠してしまうことだってできたはずだ。
「・・・・・・ありがとう」
びくりと怯えるように見上げてきた彼に小さく告げる。
すると彼は驚いたように目を瞬かせ、ふわりと本当に嬉しそうに微笑んだ。
「あのさ、君の・・・」
名前をと続けようとしたところで、彼がはっとしたように後ろを向く。
そちらに意識を向けると、何かの叫び声のようなものが聞こえてきた。
『・・・ん、レンっ!どこだ、レン!!』
「オレ、いかなくちゃ・・・・・さよ、なら」
「っ、ちょっ・・・!」
待ってという暇もなかった。
するりと抜け出して、とたとたと走り去っていく。
相手がよほど大事なのかもしれない、そう思ってちくりと胸が痛む。
「レン・・・ね」
握りしめたお面を見つめながら呟いた言葉は、夏の喧騒にかき消されていった。
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