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おお振りより。
水谷×三橋。

小さくなっていく影を見送ることが嫌いだった。
さよなら、と一言声に乗せるのが酷く大変な作業に思えた。

「ねぇ、三橋」

ふにゃりと、彼がとても優しく笑う。
自惚れだと笑われるのを覚悟で言うと、彼のこの笑みを見られるのは自分だけなのだ。
嬉しくて嬉しすぎて、怖い。

「『また明日』」
「へぅ?」

言われた意味が理解できず、首を傾げる。
それでも彼は怒ることなく、柔らかく微笑んだ。

「また、だよ。三橋」
「ま、た?」
「そう。さよならなんて言われたら、寂しいもん」

文貴くん泣いちゃうとおどけてみせる彼に、必死に言葉の意味を考える。
考えて考えて考えて、理解する。
弾かれたように顔をあげると、真っすぐな彼の視線と瞳が交わった。

「でも、あの・・・水谷君、」
「んー?明日には人間なにがあるか分からないって?三橋も案外心配性だねー」
「え、あ、う・・・あ」
「いいんだよ」

言葉にならない音を遮って、やっぱり彼が笑う。
優しく包み込んでくれるような、あまいあまい響き。

「これは約束だから」
「約、そく・・・?」
「うん。オレが三橋と明日も会えるっていう、約束の言葉」
「明日の、約束」
「そうそう。オレと約束は、いや?」
「いっ、イヤじゃ、ないっ」

勢いよく首を振ると、とても嬉しそうな彼につられて自分の頬も緩む。
明日会えなくなっても、何がっても。
いつになってもいい。だってそれは、約束なのだから。

「水谷、君」

呼びかけた声に、笑みが返される。
精一杯の笑顔を彼に向けて、手を振った。

「また、明日・・・!」
「うん、また明日ね!三橋」

やっぱり小さくなる影を見送るのは好きにはなれない。
それでも毎日交わされ続ける約束は、明日へと続いていた。
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