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大勢で電車に乗るというのは、決して楽しいものではない。
貸し切りではない車内にいるのは自分たちだけではないのだ。
そうなると必然的にこの騒がしいメンバーの管理は、主将たる彼の役目であるわけで。
憂鬱な気分で滑り込んだ電車に乗り込んだ花井は、それが全て杞憂ですんだことにほっと胸を撫で下ろした。
「寝た・・・な」
相当疲れていたのだろう。
電車に乗り込んですぐに眠りこんだ部員たちに、花井は苦笑を浮かべる。
車内に乗客が少なかったのも幸いだったかもしれない。
「まあ、花井は起きててくれなきゃ困るけどね」
「一応はそのつもりだけどな」
「いいの?そんな適当で、主将なのに」
「お前だって副主将だろうが」
「だから起きてるじゃない。こうして独り寂しい花井の話し相手になってあげてるでしょ」
「栄口・・・」
にこにこと人の良い笑みを浮かべる栄口に、小さく溜め息をつく。
確かに皆が寝ていると起きているのが辛くなるのは確かなので、話し相手は有り難い。
有り難いのだが、いかんせん彼との会話は色々な意味で疲れるのだ。
そう、どうせ相手にするのならば、
「三橋がいい。とか、花井にしては随分とまあ、ねぇ」
「なっ、な!?オレは別に何もっ・・・!」
「はいはい、花井うるさい。三橋が起きちゃうから」
「だからなんで・・・っ」
「うるせぇよ!三橋が起きる!」
「・・・・・・阿部、お前は」
「いちばん騒がしいのは阿部だから。うるさいよ」
じっっと三橋の寝顔を観察していた阿部に実害はないので取り敢えず放っておいたが、
やはりそれは間違いだったようだ。
害虫はそうそうに駆除して然るべきである。
花井が栄口に軽く目配せすると、にっこりと微笑まれた。
「取り敢えず、ちょっと逝ってきてね。阿部」
「は、ばっ!さかえぐっっ・・・!!?」
ご愁傷さま、と心の中だけで呟いて花井は重たい息を吐き出す。
それでも幸せそうな三橋の寝顔が視界にはいって、思わず頬を緩ませるのであった。