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サモンナイト2より。
マグリュ+ロッカ。
 


村から大分奥まったところに、それはある。
リューグとふたりで木材を運んで、石を積んで、その間僕らは一言も話さなかった。
あれからもう長い長い時間が経っているはずなのに、その日のことは鮮明に記憶に残っていた。
悲しみも悔しさも、何もかもがそのままに。

「ここにリューグの両親が眠ってるんだな」

珍しくしんみりと感傷に浸っていたのに、あっさりとそれをぶち壊される。
この人はいつだってそうだ。もうちょっと、空気を読むことを覚えたほうがいい。

「マグナさん?こういうときくらい、地味な嫌がらせは止めたらどうですか」
「えー?嫌がらせって何がだよ」
「なるほど。意識もしないほど自然な嫌がらせだと」

ふふっと口許だけで微笑んで、マグナさんを見詰める。
彼は仕方がないという調子で、やれやれと首を振った。

「分かったよ、言いなおせばいいんだろ」
「なんで上から目線なんですか・・・」

マグナさんは先ほどと同じように前を向いて、小さく笑う。
それはいつもとは違う、静かな優しい笑みだった。

「ここに、リューグとロッカの両親が眠ってるんだな」

あれから、いろいろなことがった。
村の人たちに心配をかけないようにというのは建前で、ただ悲しみを遠ざけるために、
こんな村はずれにお墓を造ったのだ。

「ええ、もう随分と前から」
「そっか。じゃあ、きちんと報告しておかないとな!」
「報告って・・・ちょっと」

とてつもなく嫌な予感がする。
だいたいこの人は、口を開いてまともなことを言ったためしがない。
止めようとしたのも遅く、彼はにこにこと笑みを浮かべた。

「初めまして。お父さん、お母さん。リューグとお付き合いさせてもらってるマグナです!」

言った・・・言ってしまった。
ああ、これだけは内緒にしておきたかったのに。

「なに変なことを報告してるんですか、あなたは!」
「変って、事実じゃないか」
「マグナさんみたいな人と付き合ってるなんて知ったら、ふたりが心配するでしょうが!」
「ちょ、ちょっと!それどういう意味だよ」
「そのままの意味ですよ、僕の弟を誑かすなんて」
「な・・・じゃあ言わせてもらうけど・・・」

ここが何処かも忘れて、いつもの言い合いに発展しそうになって。
それを制したのは、僕らが絶対に逆らえない人物だった。

「うるせぇ。手前ぇら騒ぐんだったらどっかいけ」

それまで熱心に手を合わせていたリューグが、不機嫌そうに眉根を寄せて僕たちを睨んでいる。
やってしまったと苦笑が漏れつつ、ごめんとリューグに謝る。
ふんっと鼻を鳴らしたリューグに、マグナさんががばっと抱きついた。

「ごめんな、リューグ。でもやっぱり挨拶は大事だと思うんだよ」
「ばっ、離れろ!こんなとこで抱きつくんじゃねぇ!!」
「えー、だってオレはリューグが好きだし」
「意味分かんねぇよ!離れろっ」
「やだー」

嬉しそうなマグナさんと、それを離そうと必死にもがくリューグの姿。
我が弟の頬がほんのりと紅くなっているのは、怒りだけではないのだろう。

「・・・父さん、母さん」

マグナさんは、あれでけっこういいところがあったり。
それに、誰よりも何よりもリューグを愛してくれています。
リューグも然り・・・認めたくはないけど。
僕が支えられればよかったし、支えていたかった。
でもやっぱり、僕たちの世界には「他人」というものが必要だったのだと思う。
だから安心してください。僕だってまだ、

「リューグから離れる気なんてさらさらないしね」

呟く声が届いたのか、マグナさんが首を傾げる。

「なんかいった、ロッカ?」

にっこりと彼に向かって笑ってみせる。
父さん、母さん。さっきの話は内緒にしておいてくださいね?

「さっさとリューグから離れてくださいっていったんですよ、この変質者!!」


 

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