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ライ×アルバ。
「っ・・・!?」
小さく息を飲む声が聞こえてきて、アルバはガラス片を掴んだまま隣を見遣る。
何故彼がガラス片を片づけているのかと言えば辺り一面に散らばっているからであって、
何故辺り一面に散らばっているかと言えば、ミルリーフが誤って食器を落としてしまったからだ。
その当事者であるミルリーフは、箒と塵取りを取って来るように言い渡されたので、ここにはいない。
というわけで、隣にいるのはミルリーフにそう言い渡したライだけなのであるが、
「ライ?どうしたの・・・って!?」
「あ、ああ。ちょっと切っちまった」
ハハと苦笑しながら笑うライの指先から、ポタポタと血が滴り落ちていく。
本人はちょっとなどと言っているが、流れる血の量をみるかぎり、傷はかなり深そうだ。
アルバは慌てて、ずいっとライに身を寄せる。
「ちょっとどころじゃないって!早く手当しないと!」
「いいって、そんなもん。アルバは大袈裟すぎんだよ」
「何言ってるんだよ、血が!」
「こんな傷、いつもに比べたらたいしたことないって。だろ?」
「そ、それは・・・でもさ!」
確かにいくら深目の傷だからと言っても、戦いでおったものに比べれば些細なものかもしれない。
だが、それでもやっぱりアルバは心配なのだ。
懇願するような視線に気がついたのか、ライは小さく苦笑した。
「大丈夫だって。こんくらいの傷、舐めとけば治るし。心配してくれてありがとな」
このとき、正直アルバは焦っていたのだ。
ライが強情なのは分かっているし、かと言ってこのままほおっておくことなどできようはずもない。
無理やり手当しようとしたところで、恐らく大人しくはしてくれないだろう。
では、どうするか。
そんな時に聞こえた、ライの言葉。
本人が言っていることならば、嫌がられることもないではないか!
もう一度言おう、このときアルバは焦っていたのである。
まともな思考など、持ち合わせていなかったのだ。
「じゃあ、おいらが舐めるよ!」
「は・・・・・・はあ!!?」
言葉だけ聞いたら、なんだかいろいろとイケナイ妄想を繰り広げてしまいそうだ。
ライは一瞬頭に浮かんだよこしまなそれを隅に追いやって、慌ててアルバと距離をとろうとした。
が、時すでに遅し。
アルバはライの傷ついた手を掴んで引き寄せると、パクリと、自らの口に含んだ。
「ちょっ・・・ま、アルバ!」
「んっ・・・・・・ん・・・」
なんなんだ、何が起こっているんだ。
これは、このままでは非常にまずいものがある。
「ある、ば・・・はなっ・・・・ふっ・・」
「・・・・・んぅ、ん・・・・・・」
決して、そう断じて、まだ日も高いこんな時間からナニをしようとしているわけではないのだ。
なのに、この時折アルバから漏れる微かな息遣いだとか。
それにちょっと、自分が反応しはじめてしまっているとか。
いやそれよりも極めつけは、
「・・・だい、じょうぶ?」
心配そうに、少し潤んだ目で見上げてくるアルバの視線。
(もうダメかもな、オレ・・・)
ライのギリギリの戦いは、箒と塵取りを持ったミルリーフが戻ってくるまで続いたのであった。