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ラブレボより。
剣之助総受け風味。
 


ばたばたと廊下を走る音がひとつ、ふたつ。
その音が、ぴたりとその部屋の前で止まった。

「センセイ!」
「不良教師!」

がらりと勢いよく開け放たれた扉に驚くこともなく、ちらりと目を向ける。
だがその呼ばれ方には些か不満があったようで、その部屋――保健室の主である若月はむっと眉を顰めた。

「華原・・・おまえ、オレ様に向かって不良教師たぁいい度胸じゃねぇか」
「本当のことを言われて怒るなんて、大人げないですよ?せ・ん・せ・い」
「なっ、てめ・・・!?」

にこりと爽やかに微笑む雅紀に、若月が思わず椅子から立ち上がりかける。
それを制したのは、今までイライラと2人のやり取りを眺めていた彼だった。

「もう、そんなことどうでもいいよ!」
「どうでもいいいわけ・・・」
「まあ、確かに。どうでもいいか」

颯太の怒声に矛先を変えかけた若月だったが、予想外に雅紀があさっりと頷いてくる。
なんだか拍子ぬけしてしまって、深々と溜息を吐いた。
これだから、ガキの相手はイヤなんだ。
どかりと椅子に座りなおして、面倒くさそうに頬杖をついた。

「ったく・・・で、なんのようだ?」
「よう?」
「そんなの決まってるでしょ!」

雅紀と颯太は、まさに子供のそれで無邪気に微笑む。
若月は無表情に、彼らのことを見つめた。

「橘はどこです?」
「剣之助は何処!」

完璧な笑みで、けれど挑むような視線を寄こしながら、じっと若月のことを見つめてくる。
若さゆえのなんとやらか。
そんなことをふと思って、自分が酷く年をとったような気がして微かに首を振る。
いやいや、これは大人の余裕というやつだ。

「橘?ここは保健室だぜ?いるわけねぇだろうが」
「へぇ、シラを切るつもりですか?」
「ここにいるってことは、すでにネタがあがってるんだからね!」
「ネタっておまえなぁ・・・」
「ま、もとから貴方がおとなしく教えてくれるなんて思ってませんけどね」
「そうそうー。センセイって、底意地悪いし」
「お、おまえら・・・」

もっと教師を、いや、年上を敬えと全力で教育的指導をしてやろうかと若月の拳がふるふると震える。
そんな若月などお構いなしに、2人は勝手に保健室を探索しにかかった。
まずい、そう思ったのと同時に、救いの神はやってきた。

「本当に、ここには彼はいないよ。ふたりとも」

かしゃりとカーテンが引かれ、綺麗な笑みを浮かべながら雅紀と颯太を見つめる。
てっきり若月しかいないと思っていただけに、2人は驚いたように目を瞬かせた。

「かっ、神城先輩!?」
「センパイもここにいたの!!?」
「うん、ちょっとね」

言いながら、神城は小さく微笑む。
見た目だけならば元気そうだが、彼はいま保健室にいたのだ。
他の人間ならばサボりだとか色々理由は考えられそうだが、神城に限ってそれはない。
ということは、つまりだ。

「雅紀先輩」
「・・・・・・わかってるよ」

はぁっと溜息を吐きつつ、雅紀がくるりと踵を返す。
それを見た颯太も嬉しそうに笑いながら、雅紀の後に続いた。

「センパイ、邪魔してごめんね!ゆっくり休んでねー」
「あっ、うん。ありがとう」

神城の登場でやけにあっさり帰って行った2人になんだかなぁと思いつつ、
まあ根はいいやつらなんだよな、うん。とか若月はひとりで納得してみる。
にこにこと笑いながら颯太と雅紀を見送っていた神城が、そのまま若月に視線を向けた。

「ギリギリでしたね、先生?」
「あー、いや。まあ・・・」

ポリポリと頭を掻きながら、言葉を濁す若月にくすりと笑みを浮かべる。
ふと隣のベットに目を映すと、幸せそうな寝顔をした剣之助がぐっすりと眠っていた。

「悪かったな、神城」

いつの間に立ちあがったのか、そのベットを覗き込みながら、若月がバツが悪そうに苦笑する。
神城はふるふると首を振って、にっこりと笑った。

「気にしないでください、先生にはいつもお世話になってますし。それに」
「あ?」
「それに、彼のこんな寝顔が見られるんですから。役得ってものです」

なっと、若月の表情が一瞬で固まる。
まさか、まさかこれは、そういうことなのか!!?
何も言えずにわたわたする若月を、神城は面白そうに笑っていた。
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