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TOVより。
ラピード×ユーリ。
ラピード×ユーリ。
目を開けるとそこは水溜りだった。
ぼんやりとした頭で、これは夢だとすぐに気がついた。
そうでなければ、自分が「ヒト」の姿でいることなんてあるはずがない。
「・・・ここは、どこだ」
もともと人語は理解しているので、言葉にすることはさして難しいことではない。
呟いた声は霧散していき、周りの木々に吸い込まれていった。
ぐるりと辺りを見回すと、ここはどうやら森のような場所であることが分かる。
自分のいる場所は水溜りの上で、何故かそこから動くことができないでいた。
まあもともと夢などは脈絡がなく、意味もないものだと認識している。
早く目が覚めてくれないものかと、深く溜息を吐いた。
「ん?オマエ、ラピードか?」
聞こえるはずのない、声。
けれど聞き間違えるはずのない声が、凛と木々のなかに木霊した。
「ゆ、ユーリ・・・?」
戸惑いが、そのまま音となって響く。
これは夢。ならば彼がここにいるのもおかしくないではないか。
そうは思っても、思考はなかなか落ち着いてはくれなかった。
「ははっ、なんだよ。人間姿もかっこいいじゃねぇか」
にやにやと笑いながら、ゆっくりとこちらに向かって近づいてくる。
それでも相変わらず水溜りから動くことは出来ず、
ただじっと彼のことを見つめることしかできなかった。
少し離れた場所で立ち止まった彼にどうすることもできず、ただ大きく目を見開く。
「ユーリ、なのか?本当に」
「なに言ってやがんだ。相棒の顔を見忘れたってのか?」
「いや・・・そんなはずないが。だいたいこれは夢ではないのか」
「夢、ねえ?どっちにしろ、オレは本物だしな」
いつものように軽く笑う姿は、確かにユーリそのもので。
リアルに感じられる彼は、とても夢のなかだとは思えなかった。
では、これは夢ではないというのか?
「・・・よく、オレだと分かったな」
夢でないとして、彼が本物だとして、一番気になることはそれだった。
今の自分は犬ではない。どこからどう見ても人間そのものである。
困惑しながら問いかけると、彼は呆れたように笑った。
「ばーか。何年一緒にいると思ってるんだよ、相棒」
何でもないことのように言って、いつものように頭をくしゃりと撫でてくれる。
人になると自分のほうが背が高くなるのか、彼が少し背伸びしていたのがなんだかおかしかった。
「で、なんでそんなとこいんだ。ラピード」
「・・・動けないんだ。ここから」
「動けないって、なんで?」
「分からん」
むぅっと唸るように告げると、なんだそりゃと彼が吹き出す。
そんなこと言われたって、分からないものは分からないのだ。
オレだってユーリの傍にいきたい。だが、
(行っても、許されるのか・・・?)
瞬間、ざばんと水飛沫が跳ねる。
彼を見下ろしていた視線が、いつの間にか見上げるものになっていた。
「ラピードっっ!?」
焦ったような彼の声が、耳に飛び込む。
最初は自分が犬に戻ったのだと思ったが、そうではない。
ただの水溜りだったはずのそこに、飲み込まれようとしていた。
「馬鹿野郎っ、何してんだ!はやくつかまれ!!」
目の前に差し出された手。
沈みゆく身体。
この手をとって、彼まで一緒に落ちることになってしまったら。
「ユーリ、オレはっ・・・」
「うるせぇ!いいからつかまれっ」
引っ込めかけた手を、無理やり掴まれる。
華奢な体に似合わない強い力で引っ張られ、彼の胸の中に飛び込むように倒れこんだ。
「ゆー・・・り」
掠れた声で呼んだ名前に応えるように、彼は荒い呼吸をつきながら口元を緩める。
滅多に見ることのできない、安心しきった笑みがそこにはあった。
「まったく、世話焼かせやがって。しっかりしてくれよ?」
「・・・っ・・・ユーリ、ユーリ・・・」
「お、おい!?ラピード!!?」
彼に圧し掛かったまま腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめる。
ぐりぐりとおなかに頭を押しつけて、甘えるようにすり寄った。
「ったく、人になってもそういうとこはかわんねぇな」
呆れたように呟きつつ、優しく頭を撫でてくれる。
何度も何度も、ゆっくりとゆっくりと。
水溜りには何事もなかったかのように、静かな波紋が広がっていた。
ぼんやりとした頭で、これは夢だとすぐに気がついた。
そうでなければ、自分が「ヒト」の姿でいることなんてあるはずがない。
「・・・ここは、どこだ」
もともと人語は理解しているので、言葉にすることはさして難しいことではない。
呟いた声は霧散していき、周りの木々に吸い込まれていった。
ぐるりと辺りを見回すと、ここはどうやら森のような場所であることが分かる。
自分のいる場所は水溜りの上で、何故かそこから動くことができないでいた。
まあもともと夢などは脈絡がなく、意味もないものだと認識している。
早く目が覚めてくれないものかと、深く溜息を吐いた。
「ん?オマエ、ラピードか?」
聞こえるはずのない、声。
けれど聞き間違えるはずのない声が、凛と木々のなかに木霊した。
「ゆ、ユーリ・・・?」
戸惑いが、そのまま音となって響く。
これは夢。ならば彼がここにいるのもおかしくないではないか。
そうは思っても、思考はなかなか落ち着いてはくれなかった。
「ははっ、なんだよ。人間姿もかっこいいじゃねぇか」
にやにやと笑いながら、ゆっくりとこちらに向かって近づいてくる。
それでも相変わらず水溜りから動くことは出来ず、
ただじっと彼のことを見つめることしかできなかった。
少し離れた場所で立ち止まった彼にどうすることもできず、ただ大きく目を見開く。
「ユーリ、なのか?本当に」
「なに言ってやがんだ。相棒の顔を見忘れたってのか?」
「いや・・・そんなはずないが。だいたいこれは夢ではないのか」
「夢、ねえ?どっちにしろ、オレは本物だしな」
いつものように軽く笑う姿は、確かにユーリそのもので。
リアルに感じられる彼は、とても夢のなかだとは思えなかった。
では、これは夢ではないというのか?
「・・・よく、オレだと分かったな」
夢でないとして、彼が本物だとして、一番気になることはそれだった。
今の自分は犬ではない。どこからどう見ても人間そのものである。
困惑しながら問いかけると、彼は呆れたように笑った。
「ばーか。何年一緒にいると思ってるんだよ、相棒」
何でもないことのように言って、いつものように頭をくしゃりと撫でてくれる。
人になると自分のほうが背が高くなるのか、彼が少し背伸びしていたのがなんだかおかしかった。
「で、なんでそんなとこいんだ。ラピード」
「・・・動けないんだ。ここから」
「動けないって、なんで?」
「分からん」
むぅっと唸るように告げると、なんだそりゃと彼が吹き出す。
そんなこと言われたって、分からないものは分からないのだ。
オレだってユーリの傍にいきたい。だが、
(行っても、許されるのか・・・?)
瞬間、ざばんと水飛沫が跳ねる。
彼を見下ろしていた視線が、いつの間にか見上げるものになっていた。
「ラピードっっ!?」
焦ったような彼の声が、耳に飛び込む。
最初は自分が犬に戻ったのだと思ったが、そうではない。
ただの水溜りだったはずのそこに、飲み込まれようとしていた。
「馬鹿野郎っ、何してんだ!はやくつかまれ!!」
目の前に差し出された手。
沈みゆく身体。
この手をとって、彼まで一緒に落ちることになってしまったら。
「ユーリ、オレはっ・・・」
「うるせぇ!いいからつかまれっ」
引っ込めかけた手を、無理やり掴まれる。
華奢な体に似合わない強い力で引っ張られ、彼の胸の中に飛び込むように倒れこんだ。
「ゆー・・・り」
掠れた声で呼んだ名前に応えるように、彼は荒い呼吸をつきながら口元を緩める。
滅多に見ることのできない、安心しきった笑みがそこにはあった。
「まったく、世話焼かせやがって。しっかりしてくれよ?」
「・・・っ・・・ユーリ、ユーリ・・・」
「お、おい!?ラピード!!?」
彼に圧し掛かったまま腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめる。
ぐりぐりとおなかに頭を押しつけて、甘えるようにすり寄った。
「ったく、人になってもそういうとこはかわんねぇな」
呆れたように呟きつつ、優しく頭を撫でてくれる。
何度も何度も、ゆっくりとゆっくりと。
水溜りには何事もなかったかのように、静かな波紋が広がっていた。
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