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ユーリ←←←フレン。
「ユーリ、話があるんだ」
至極真面目な声色で告げられ、ユーリはきょとんと瞳を瞬かせる。
一瞬だけ視線をフレンに投げ、ああと生返事ひとつで再び作業に戻った。
ユーリ・ローウェルに課せられた現在の重要な使命は、目の前の甘味を胃袋におさめることである。
「僕とユーリのことなんだけどね」
だがフレンはまったく気にした様子もなく、淡々と話を続ける。
そしてフォークを口に含んだユーリの瞳いっぱいに、フレンの顔が広がった。
その距離にも動じず、ユーリはこいつ相変わらず顔だけはいいよなぁとそんなことを思う。
慣れって恐ろしい。
真剣な瞳をした彼は、ゆっくりと言葉を発した。
「そろそろ僕たちの将来について考えるべきだと思うんだ」
ぶはっと、フォークがフレンに向かって飛びかかる。
持ち手でよかったと喜ぶべきか嘆くべきかの判断は、取り敢えず保留。
ついに頭がおかしくなった腐れ縁の金髪を、まじまじと見つめた。
「お前、ついにイカれたか?」
「何を言うんだい、ユーリ。僕はいつだって君への愛でいっぱいだよ」
「誰も聞いていないことを親切にどうもありがとう。てか、フレン」
キラキラと輝かしくも鬱陶しい笑顔を惜し気もなく晒すフレンに、ユーリは無表情で問いかける。
聞きたくはない。確認したくもない。正直関わり合いになどなりたくもない。
それでも後々被害を被るのは確実に自分なので、無視するわけにもいかないのだ。
何故オレはこんなのと幼馴染をやっているのだろう。
「将来ってなんだ。まさか、結婚・・・とかじゃない、よな?」
冷や汗をだらだら流しながら無表情を装うというのも、なかなかに労力がいる。
頬がひくひくしているのは、多分気のせいではない。
フレンは無駄に爽やかに笑いながら、違うよと首を振った。
「そんなわけないじゃないか、ユーリ」
「・・・だ、よな。うん」
常識的に考えれば、そんなことはあり得ない。
しかしその常識という超えてはならない壁を易々とぶち破ってしまうのがこの男なのである。
体当たりが信条とか本気でやめてほしい。
ユーリがほっと息をついて、再び甘味処理作業に戻ろうとした、その時だった。
「結婚なんて、ただの通過点に過ぎないよ!」
「・・・・・・は?」
聞き間違いか?今のはオレの聞き間違いか!?
そうであってくれと願いも虚しく、フレンはにっこりと笑顔を浮かべた。
「僕たちの最終地点は、一緒のお墓に入ることだろう!」
うっわ、なんだこれなんだこれなんだこれ。
鳥肌が、いまだかつてないほどの鳥肌が!
「お前・・・マジでドン引きだ・・・」
「照れなくてもいいのに。あっ、苗字は僕のでいいかな?」
「もうホント消えろ、むしろ消えてくださいお願いします」
「僕としては君のでもいいんだけどね。やっぱり旦那としては譲れないものがあるっていうか」
「キモイキモイ、本気でキモイ!こっちくんな!」
「ははっ。ユーリってば僕がいないと寂しいく・せ・にっ、もう!」
「っっ、ら、ラピード!ラピードぉぉっ!!!」
主の危機に一目散に駆け付けた彼が、その後どんな制裁を下したのか。
それを知る者は、誰もいないのであった。