忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おおきく振りかぶってより。
三←水+泉。

かたんと、音が響く。
それは目の前の椅子が引かれ、腰掛けられた音。
誰が、なんて考えるのも嫌すぎる。

「ねぇ、殺したくなるのも恋かな?」

ほんとに、なんだってこいつはこうなのか。
せめて名乗るとか、日常会話を挟むとかすればいいだろうが。
そこまで考えて、溜息。
こんな奴と日常会話なんて、それこそ反吐がでる。

「本気でそんなこと思ってんなら、正真正銘のクソだな」

目線は上げず、吐き捨てるように告げる。
告げてから、しまったと思う。
ここは普通に会話を続けるべきじゃなかった。
それこそ、オマエ頭おかしいんじゃねぇので終わらせるべきだったのに。
相手がくすりと笑ったのが、気配で分かった。

「そっかなー、だって根本的には変わんなくない?」
「・・・変わらないでたまっかよ」

何を、なんて聞かない。
こんなのと一緒だと思われるなんて、死んでもごめんだ。
それでも、そのことに気がついているのも事実。
だからこそ、頭のなかで必死に否定の言葉を探している自分がいる。

「別にさ、オレのものだけにしたい!とかって、イっちゃてる人じゃないわけだし」
「殺したいとか言ってるだけで既にイってんだろ」
「ひっどーい。言っときますけどね、オレは独占欲なんてかけらもないんだから!」

よよよと泣きまねをする声が聞こえるが、そんなものは無視。
こいつだって、相手されるなんてはなから思っちゃいないだろう。
多分、さっきの言葉は真実。
一般的に言われる独占欲なんてもの、持ち合わせちゃいないからこそ厄介なのだ。

「泣いてるとこ、見たくなんてないじゃん」
「ほんとにクソなんだな、オマエ」
「そんな方法しか考えられないのかよ、って?」
「っ!」

思わず、はっとして顔をあげる。
にへらと顔だけで笑う目線とぶつかって、しまったと思うがもう遅い。
ああ、くそ。本当にくそだ、こいつは。

「そうだよ、だってさ。オレはもう泣かないようにしてあげたいだけだもん」
「だったら傍にいてやればいいだろ、ずっと。泣かないように」
「それじゃあ意味ないし。泣く心配をなくしてあげてから、傍にいてあげればいいじゃん」

最低だな。
低く呟いたら、かもね!なんてやけに明るい笑い声が返ってきた。
舌打ちする気にもならなくて、がたりと椅子から立ち上がった。





(守りたいという根本はおんなじくせして)
(ただ、そのベクトルが違うだけなんだってことだよ)



PR
COMMENT FORM
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TRACKBACK
TRACKBACK URL: