１４．寂しい花火

今日からマのつく自由業より。
コンラッド×村田。

はじけて、消える。一夜限りの、夢。


「僕さ、恋愛って花火みたいなものだと思うんだよね」

鼓膜を刺激させる音に紛れ込ませるように、彼が呟く。
並んで立っていた長身の男が、怪訝そうに眉を顰めた。

「なんですか、突然」
「別に。ただ思っただけ」

あまりにもあっさりとした、そっけない返事。
闇に紛れた漆黒が、微かに風に揺られていた。

男は会話を続けるべきなのかどうか、一瞬迷う。
だがその必要もなかったようで、彼が再び口を開いた。

「あがって、消える。キラキラと輝くのは一瞬。燃え上がるのは一夜だけ。それで、終わり」

うわ言のようでいて、その瞳には確かに強い意志が宿っていて。

分からない。
彼はいったい、何を考えているのか。

「でも、本当に消えるわけじゃない。夢は終わっても、残るものだよね」
「っ、猊下！」

嫌な予感がして、思わず口を挟む。
こんな時でさえ、名前を呼べない自分がイヤになる。


「終わりにしよう」


そして、彼は笑った。
背筋がぞくりとするほど、綺麗な笑みで。