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今日からマのつく自由業より。
村田×有利。
微かに震える背中を見ていられなくて、思わずその手を握り締める。
少し高めの体温が、低すぎるこの手に心地よかった。
「おれは魔王だから」
ゆっくりと視線を合わせながら、彼は笑う。
本当に、お人よしの大馬鹿野郎だ。
そんなふうに笑われて、安心するとでも思っているのか。
「馬鹿だなぁ、渋谷」
なるべく、いつもと同じように。
軽い、お茶らけた村田健になるように。
「なっ!?なん・・・」
「僕は、村田健だよ」
がぁっと走り出しそうになった彼の言葉を、静かに遮る。
「大賢者でもなんでもない。ただの村田だよ」
「村、田・・・・・・」
「キミは渋谷だろう?魔王であるまえに、渋谷有利なんだ」
せめて、僕の前にいるときくらいは。
伝えずに飲み込んだ言葉は、果たして届いただろうか?
そんな些細なことは、どうだっていいけど。
ふっ、と彼の力が抜ける。
微かな震えが、はっきりと伝わってきた。
ありがとう。
けれどそう言って笑った彼は、さっきよりも力強く見えた。
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