６．いつかの景色

乙女的恋革命★ラブレボより。
若月×鷹士。

夕日が辺りを照らし出すと、世界は紅く沈む。
そんなことを思ったのは、いつだっただろうか。

「いつだっけなぁ・・・」
「何がだ？」

独り言のような鷹士の呟きに、若月が言葉を返す。
鷹士はちらりとそちらを見て、軽く苦笑した。

「いやな、前にもこんな景色を見た気がしてさ」

そう、確かあの頃はまだ、小さな手を握り返していたのは自分だった。
夕日の紅が血のようだと、震える肩を抱き締めてあげた。

「なるほどな。妹と見たってわけか」

寂しそうに夕日を見つめる鷹士に、訳知り顔で若月が頷く。
鷹士はそれが図星だっただけに、ただ大きく苦笑を深めた。

「まあ、な。もうあの手を引くのは俺じゃないんだなってさ」
「ったく、このシスコン野郎が」

呆れたように溜め息を吐いて、若月は鷹士の背中を思い切り叩く。
鷹士は驚いて、思わず若月の顔を見つめた。
にっと、彼は妖しく笑い返す。

「まあ、いいじゃねえか。お前にはこのオレ様がいるんだからよ」
「・・・よく言う」

鷹士は驚きに軽く目を見開き、だがすぐに面白そうにくすくすと笑う。
そんな鷹士を見て、若月は不服そうに唇を尖らせた。

「んだと？このオレがここまで言ってやってんのによ」
「わかってる」

ピタリと、鷹士の笑い声が止まる。
怪訝そうな瞳を向けてくる若月に、鷹士はゆっくりと繰り返した。

「わかってるよ。先生は、ずっと俺の傍にいてくれるんだろ？」

どこか悪戯っぽく微笑んだ鷹士に、若月は小さく吐息を漏らす。
こいつには、一生かかってもかなわねえ気がする。

「ああ。お前が望むかぎりな」

笑って、鷹士を自分のほうに引き寄せる。
世界は、完全に紅へと染まっていた。